久々に受けた病院の面接を3つ受けて、見事に3連敗した、そのすぐ後ぐらいだったと思う。
とある求人、メールを受け取った。
それは求人サイトからでも、病院からでも来たメールではなかった。
ある看護師専門の人材紹介会社からだった。
看護師のための人材紹介・派遣会社、といってもいくつか種類がある。
一つは私が散々関わっている、日本でいういわゆる派遣会社である。
その会社を通じて、仕事に応募し、給料もその会社からもらい、
ほとんどの場合は福利厚生はなし、というパターンである。
次によく見かけるのは、アメリカには「トラベル・ナース」という看護師の働き方があり、
人手不足の病院に、だいたい3か月ぐらいの契約で派遣されるといったものだ。
その間の住居代や移動費も支給され、健康保険もたいていついていて、
なおかつ、時給も普通で働くよりは通常は割高という、かなりおいしい働き方なのだ。
そのトラベル・ナースの取り扱い専門の派遣会社というのが、無数に存在する。
最後に紹介するのは、病院・施設に直接雇用される案件のみを扱う、人材紹介会社だ。
これは、応募や採用プロセスまでは、紹介会社の担当のリクルーターががっちり関与するのだが、
いざ、その病院に採用されれば、その後は本人と病院のやりとりということになる。
今回、私に来たメールとは、最後に挙げた人材紹介会社のうちの会社から来たものだった。
その会社のことはおぼえていた。
比較的、有名でよい条件の病院の仕事を紹介する会社で、
交通費や宿泊費はその会社もちで、就職イベントや就職ツアーを催すことで知られている。
応募条件のところに「要・病院勤務の経験」となかったので、
きっと当たり前すぎて省略されているだけだろうと思いつつも、
「病院勤務の経験がないけど、就職イベントに応募できますか?」という、
問い合わせのメールを出したことがあったのだ。
普通こういう場合で、条件に該当しない場合は、華麗にスル―されるものなのだが、
この会社からは、かなりすぐに、「ダメです」という返事が来たのだ。
それも機械的なテンプレートのメールでもなく、差出人も会社のカスタマーサービスではなく、
ちゃんとしたリクルーターの個人メールから出してくれていた。
メールの内容は、今回のイベントは経験者のみ対象である。
全ての病院というわけではないが、病院の採用担当は、老人ホームの経験が長い看護師を避ける傾向がある。
ただそうではないケースもあったので、諦めないで頑張ってほしい。
といったようなことが書かれていた。
どちらかと言えば、というか、ぶっちゃっけ、かなり悪い知らせを教えてくれたわけだが、
私はこのメールをもらえて嬉しかった。
あまりにもスル―されることが当たり前な中、わざわざ返信してくれたということだけでもありがたかったし、
私は自分に都合が悪いことだとしても、できれば真実が知りたいというタイプだった。
そして、この真実はある意味で救いとなった。
というのは、全く私だけが原因で、
(英語がいまいちだとか、年がいっているだとか、質問に対する回答がしょぼいとか)
落とされているんではないんだ、と知ることができたからだ。
とはいっても、まあ、それじゃますます病院で働ける可能性なんてないんだろうな、
とその時は思い、その会社とはそれ以来やりとりすることはなかった。
リクルーターから来たメールは、このようなことが書かれていた。
今度、当社が行う就職ツアー先の病院は、リハビリ部門の募集もしている。
リハビリ部門の採用条件は病院勤務の経験が必要ないので、あなたも応募できますよ。
どういうわけか、問い合わせした時の私の情報を取っておいてくれたらしく、
私の条件に合う案件があがってきたら、こうして連絡してくれたのだ。
速攻、もちろん興味あります!と返信し、その就職ツアーの参加への手続きをすることにした。
前に述べたように、そのツアーの交通費、宿泊費は全て人材紹介会社が負担することになるため、
誰でも気軽に参加できるというわけではなく、会社としても、病院から採用される可能性があり、
なおかつ冷やかしではなく、真剣にその病院への就職を考えている候補者に限る必要がある。
なので、参加の手続きのためにリクルーターと、何回か面談やメールや書類のやり取りをしたのだが、
それはまるで実際の採用手続きに迫るような、真剣で徹底的なプロセスだった。
ツアー先の病院は、北中西部の、カナダと国境を接している州にあった。
往復の飛行機を手配してもらい、イベント前夜に宿泊するホテルは、その町の中では一番良いホテルだった。
朝はそのまま、そのホテルの会議室で朝食を取りながら、病院の人事部による病院全体の説明会が行われる。
その後は、用意してくれたシャトルバスに乗り、そこから数分で着く距離にある病院に面接に行く。
私の場合は、リハビリ部のマネージャーと、副マネージャー、そして現場代表として一人の准看の計3人の面接官と、
私一人という形で約40分間の面接が行われた。
始終なごやかな雰囲気で、面接の後は、そのままリハビリ部の職場見学をさせてもらえた。
職場見学の後は、実際に採用されてからの参考にしてください、ということで、
病院のある町のツアーを、参加者全員に対してしてくれた。
子供がいる人には重要な関心事である、各学校、学区の紹介や、
お店、モール、住宅地などをひととおり、バスでまわってくれた。
町のバスツアーの後は、歓迎の夕食会を開いてくれていた。
私はというと、旅行バカこれに極まる、という感じで、
久々に飛行機に乗れて、それなりに離れたところまで旅行でき、かなり良いホテルに泊まれ、
それも全部タダだという事実に、それだけで、すっかり満足してしまっていた。
採用されたらいいけど、もう別に採用されなくても、それはそれでいいかな、というような気分までになっていた。
まったりと、振る舞われた夕食を食べ、他の参加者の人たちと談笑しているところ、
リハビリ部の副マネージャーに声をかけられる。
今日はありがとうございました、とお礼をすると、
彼女は、私の耳元にこうささやいた。
あのね、マネージャーと話して、あなたを雇うことに決めたわよ、と。
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