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ニューヨークの病院で働いて その②

今回のNYでの勤務先は、
NYに一定の期間住んでいたら、おそらく耳にした機会があるであろう、
また住んでいなくとも、NYを舞台にしたドラマなどに詳しい人だったら、
名前を聞いたことがあるはず、というある意味、有名な病院だった。

「有名」とは、この場合、良くも、悪くもということで、
私はどちらかと言えば、悪い方の評判を耳にしてきたけれど、
数多くの病院・施設を渡り歩く中、
どの職場でも一長一短はあるということを、わきまえていた。

なので、最初から悪い印象を持っていた方が、
期待がなく、覚悟ができている分、
がっかりすることがないのでは、なんて思っていた。

だが、これが見事に覆されようとは…

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勤務が始まる前、たまたま動画配信サービスで、
この病院を舞台にしたドラマを見つけて、
ドはまりした。

久々にのめり込める医療ドラマで、
その舞台が自分のこれからの職場だなんて、
という事実に、それなりにわくわくした。

2年間の修行の後、
ICUのトラベルナースとしての初仕事を、
その病院で、友達がいっぱいいるニューヨークシティで始めるんだ、
というきらきらした新生活を胸に抱いたのだった。

だが、しかし…

待っていたのは、
この世の中には覚悟していた以上に、ひどい現実もある、ということだった。

これまで、それぞれの職場にはそれぞれの流儀があり、
職場Aの常識は、職場Bの非常識になる、といった具合で
所変われば、規則ややり方が違ってくる、ということは、
十分、承知の上だった。

しかし、今回の勤務先の場合、非常識の度合いの次元が違うというか…
あまりにも他の病院のやり方とかけ離れており、
それが良い方向に離れているのだったら、大いにいいことだけれど、
もちろん逆の方向にであった。

私個人の感想、という可能性も無きにしも非ずだったけれど、
他のトラベルナースたちに聞いても、
「こんなの見たことない、こんなのありえない」
という、私の心の叫びと同様の意見を聞いたので、
事実であるといってもよいと思う。

職場での状況が想定外だったのだが、プライベートのニューヨークでの仮住まいでの生活も、
これまた想定外だった。

仮住まい、といっても契約する前に、
内見には行っていた。

それで大丈夫、と思って契約したのだけれど、
実際に住んでみてみると、どうにも落ち着けない。

具体的に言えば、共用の水回りの悪臭や汚れが気になってしまい、
シャワーを浴びるのにも、ものすごく抵抗感を感じてしまった。
シャワーを浴びても、きれいになった気になれなかった。

個室の清潔さは大丈夫だったけれど、なかなか寝付くことができず、
職場の疲れをとることができなかった。

自分専用のバスルームということだったら、
汚ければ徹底的に掃除したり、シャワーカーテンを買い替えるなどを、
これまでしてきた。

しかし、今回の場合は他のゲストと共用で、
なおかつ、管理人さんが共用スペースは掃除をすることとなっていたので、
差し出がましいまねをすることはできなかった。

しかし、そこでシャワーを使うことに対するストレスが半端なくでてきてしまったので、
対処として、まず、スポーツクラブのゲストパスを購入し、
仕事帰りにシャワーだけ利用するという手段に出た。

何回かやってみて、ストレスからは解放されたけれど、
シャワー後に、ゲストハウスに帰るのがかったるく思えるようになってしまった。

折しも、職場でのストレスも限界に達していたころで、
帰ってゲストハウスのベッドに入っても、寝付くことができず、
心身ともにボロボロとなっていた。

ここにきて、もうホテルに泊まって、ゆっくり休むしかない、
と思うようになった。

一つ前の記事で、人からホテルに泊まることをすすめられても、
予算的な制約や、チェックインが3時過ぎになってしまうことが理由で、
検討できなかった、と書いた。

しかし、昼間の時間帯のホテルの空室を、
ちょうど日本の〇ブホのように、時間割で貸し出すサービスが存在していたのだ。

私はこのサービスのことを、ずっと以前から知っていたけど、
この時に至るまで思い出すことができなかったのである。

急場しのぎで、ということで利用したのだけれど、
一度使ってしまえば、ゲストハウスに戻ることができず、
結局は仕事の最終日まで、昼間の時間帯のホテル利用サービスを使うはめになってしまっていた。

ゲストハウスは3か月分をすでに払ってしまっていて、
当然ながら、返金は無理だったので、かなりの無駄となってしまった。
しかし心身ともに限界だったので、後悔はしていない。

というわけで、職場でもぼろぼろ、
仮住まいにも居つくことができず、
連勤の場合はホテルに泊まり、
仕事休みは、ニュージャージーのアパートへ戻る、という生活になった。

なので当初思い描いていた、
仲の良い友達に囲まれて、NYライフを思い切り満喫する、
といったことには、全然ならなかったのだ。

NYの職場に通勤していたのに、
ニュージャージーの病院で働いていた時は、
毎週のようにマンハッタンで食事したり、友達と会っていたのに。

仕事とニュージャージーのアパートの往復が精いっぱいで、他のことに一切エネルギーを使う余裕がなくなっていた。

なので、数か月間、馴染みの場所にも全く顔を出さない事態になってしまったのだった。

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