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ノマドが定住していた時

4年前の夏、ニューオーリンズの病院での2年の契約を無事に終えて、
念願だったトラベルナースになった。

その後は自分が嫌になるまで、ずっと旅を続ける気でいた。

しかし、パンデミックが起こった。

世の中のほとんどの人がとてつもない変化にさらされたに等しく、
私も大きな影響を受け、思い描いていた生活のプランなどは、
ことごとく変更を余儀なくされたことは、
こちらの記事に書いた。

近況 2020年 4月

そして、病院で看護師として働いていたということで、
パンデミックを最前線で経験することになった。

その経験から、一般病棟からICUの看護師になるというきっかけにつながった。

新たな目標

ただ、トラベルナースを辞めるつもりは決してなかった。

しかし専門を変えた場合、新しい専門でトラベルナースの仕事を受けるためには、
通常、2年間ほどその専門の経験を積む必要がある。

そういうわけで、いったんトラベルナースは休止して、
正社員として病院で2年間、修行をすることになった。

普通だったら一つの病院で2年間働きそうなものだが、
私の場合は、これまでの人生のごとく、どうもスムーズにいかず、
結局、3州に渡る3つの病院に勤めることになってしまった。

つくづく人並になれない自分を恥じつつ、
今年の初めにはなんとか、
「ICUのトラベルナースとして働くことのできる」
2年間の経験を無事にゲットすることができた。

遊牧民が一つの場所にとどまる、
渡り鳥が季節が変わっても、飛び立つことがなかった、
というような、ノマドである自分にとってこの2年間とは、
いったいどんなものであったろうか。

それは自分の能力、年齢などによる制限について、
向きあい続けなければならない2年間だった。

自分がおそらく発達・学習障害を抱えてるのではないか、
という自覚は、しばらく前から持ち始めていた。

ICUナースとして働き始めて、そのことをまざまざとおぼえさせられることになった。

手術室の看護師と並んで、細かさを要求されるICUの看護師。

根っからの持って生まれた不器用さも加わり、
日々、業務を人に比べてちゃんとできない気ばかりがしてしまって、
劣等感を感じ続けていた。

ありがたいことに、周囲のサポートがあり、
業務はなんとかこなせていたのだけど、
人の命にかかわる仕事なのに、
これでいいのだろうか、
と常に自問自答せざるを得なかった。

気が付くと、信じがたいことに、
看護師になってから12年の歳月が流れてしまっていた。

その間、文字通り無我夢中で走りぬいてきた。

トラベルナースになり、ICUで働けることになって、
ようやく自分がやりたい仕事ができるようになって、
足を止めることができた。

ただ12年という、生まれた赤ちゃんが小学6年生にもなるという、

時間が流れてしまっていたのだった。

ようやく新たなスタートが切れたと思ったけれど、
当然ながら、私はその分、年をとっていた。

誰もが年をとるものだ、
と頭でわかっていても、心底自分で理解できるのは別物だ。

同僚、上司、先輩たち。
自分より年上や同世代の人たちも少なからずはいるけれど、
大多数は自分よりも若い人たちだった。

新人としてだけでなく、
自分が「老害」として足を引っ張ることになろうとは、
受け入れるのは辛かった。

パンデミックも収束に向かっていたが、
人手不足は相変わらずだったので、
体たらくであっても、その間職を失う心配はなく、
気が付けばICUで働き始めてから2年目になっていたのだった。

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  • アラフィフ、バツイチ、小梨、というスペックです。ままならない日常で思うことをつづっています。不治の厨二病を抱えて生きています。看護師をしながら、アメリカのいろいろな町をまわっています。メニューのお問い合わせからメッセージ下さい。

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