昨年8月にニューオーリンズの職場を辞めた時、
実はまだ次の仕事は決まっていなかった。
その後はトラベルナースになる、というのは決めていた。
しかし、そもそも人手不足の職場に助っ人に行く、
というトラベルナースの仕事の性質上、
求人はある程度、直前にならないと出てこないのだ。
さらに、退職後、日本に一時帰国することになっていたというのもあって、
実際に働けるのがしばらく先になってしまう。
そういうわけで、次の仕事のあてがないのに、
仕事を辞めるということになってしまった。
周囲からは心配されたが、
私としては何とかなるような気がしたし、
何よりも、地獄のような職場からとうとう抜け出せるのだ、
という嬉しさが勝って、気を病むことはなかった。
トラベルナースの仕事を探す第一歩は、
仕事を紹介してくれるエージェンシーを選ぶところから始まる。
最近では、IT技術の進歩もあって、
UberやAirBnBのような感じで、病院とナースがウェブサイトを通じて、
直接に雇用契約を結べるケースも出てきている。
しかし、従来通りエージェンシーを通じて仕事を得るのが、
今のところはまだ主流だ。
トラベル案件を扱うエージェンシーは、大小様々無数にあって、
100社は超えるほどあるという。
そうなると、どの会社を選べばいいのか迷うところだが、
今回の私の場合は、しばらく前から2,3のエージェンシーが
向こうからアプローチしてくれていた。
なので、そのまま彼らにお世話になることにした。
普通の正規雇用の仕事を探すのと違い、
トラベルの仕事はチョイスが膨大になる。
選択基準はナース一人一人で違ってくるが、
私の場合、今回は「場所」だった。
約3年間ニューヨークを離れて、無事に病院勤務の看護師になることができた。
季節はちょうど秋で、これからクリスマスなどのイベントシーズンが始まる時だった。
なので、そんな時期を親しい友人や、お世話になった先輩たちがたくさんいる
ニューヨーク周辺で過ごしたい、と思った。
そういうわけで、担当のリクルーターには「ニューヨークシティ周辺で、条件は他には問いません」
ということで、リクエストをした。
サイトで検索すれば、ニューヨーク周辺の仕事はおびただしいほど出てくる。
だが、ここでまた昔に経験したことと同じことが起こる。
求人はあるのだが、それは経験者のみに、というやつだ。
だいたい経験がなければトラベルナースになれないのに、
「トラベルナースの経験があるナースのみ」という、ハードルが待ち構えていたのだった。
この「経験者のみ」というハードルには、日本にいる頃からこの人生で散々悩まされてきたのだが、
まさかこの期に及んでも、出てこられるとは思ってもみなかった。
しかし今回の場合、自分が選ばなければ確実に仕事がある、
という、これまでに比べれば恵まれた状況であったので、
気持ちのあせりはなかった。
リクルーターが次々に仕事を紹介してくれたが、
私がいいと思った仕事 → 向こうから断られる
採用してくれた仕事 → ニューヨークから遠すぎる
という感じで、なかなか決まらない。
そのうちに、リクルーターがしびれをきらしてきた。
私がとある案件を断った時、
「こんな良い条件のいい仕事をなんで断るの?」
と、なかばキレられたのだ。
こちらも、ムッとしつつ、
確かに金銭的には良い条件だけれど、
ニューヨークからあまりにも遠い。
お給料が安くてもいいので、ニューヨークの近くの仕事、
という条件は譲れない、と返した。
リクルーターもわかった、といってそれ以上は言ってこなかったので、
その場はそれで収まった。
彼女としては、私が日本に一時帰国する前に、
連絡手段などのこともあって、仕事を決めたかったらしく、
それで多少あせっていたというのは、理解できる。
この時に感じたわだかまりは、後程繰り返されることにはなるのだが…。
結局、仕事が決まらないまま、日本に行き、
メールでリクルーターとは連絡を取り続けることになった。
そして、日本にいる間、国際電話で電話面接をしてくれる病院があって、
無事に私の最初のトラベルの仕事を、ゲットできることになったのだった。
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