私が生まれて初めて海外旅行へ行ったのは、サンフランシスコ。
そして初めての長期海外滞在先は、カナダのバンクーバーだった。
あたかも江戸時代に日本人が初めて渡米したのが、
太平洋を渡った西海岸だったように、
私の北米生活もまず西海岸から始まった。
サンフランシスコ、バンクーバーともに、
私は一瞬で魅せられ、ずっとここに住みたいと思った。
ただ、どうしたわけか、その都度の様々な理由があって、
これまで私は愛した西海岸を離れ、結局はトロントやニューヨークといった
東海岸の大都市に長年住みつくことになっていた。
いつかチャンスがあったら西海岸に戻って生活をしてみたい。
そんな願望は東海岸に住んでいた時に、折に触れて思っていた。
モンタナの病院に採用されてNYを離れることになって、
その後トラベルナースとなって全米のどの町にも行けるようになり、
その当然の結果だったのか、西海岸のシアトルに向かったわけだった。
こうして2020年の1月から2021年の3月までの1年強を、西海岸で生活することになった。
その間パンデミックが起こり、これまでにない制限された生活を送ることになったわけだったが、
私の人生の中で有数に豊かな時を過ごせたことは、これまでの数記事に渡って書かせてもらった通りである。
一時はこのまま西海岸に定住する気になっていた。
しかし、これまでとまさしく同じパターンで、期せずとして
結局、今現在はまた東海岸に戻ることになってしまったのだった。
どんなに愛していても、どうしたわけか縁がなく一緒になれない人がいる。
あたかも西海岸は、私にとってそんな存在のような気がしてきた。
バンクーバーに住んでいた時は、ワーキングホリデーの限られた1年の中で、
カナダのいろいろな地域を見てみたくて、東海岸へと向かった。
そしたら、トロントやモントリオールといった東海岸の町で、どんどん人脈が広がり、
道がついていき、腰をすえることとなった。
離婚後、就職して住んだカリフォルニアも、当時の原油高で生活がすることができなくなり、
離れることとなった。
その後、シアトルに住むかNYに住むかで迷ったけれど、
NYの会社に内定が先にもらえたので、NYへ向かった…
これまでは、こんな感じだった。
今回も決して西海岸と諍いがあったり、嫌になって離れたわけではなく、
これまでもそうだったように、仕事の都合だとかそうしたことで、
自然と離れるということになってしまったのだ。
なので、またチャンスがあったら戻りたいという気持ちは今だにある。
今でも目を閉じると、西海岸で毎日見た美しい風景を思い浮かべることができる。
太平洋の夕陽。
マウント・レーニア。
広がる葡萄畑。
新しくきれいな街並み。
私はそこにいて満たされて幸せだったし、ずっとそこにいていいと思っていたのに。
人生何が起こるかわからないし、これから先、結局は西海岸に腰を据えることになるかもしれない。
ただ今ひとまずは、西海岸とはまた距離をおくことになってしまった。
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