6か月先は闇 (後編)

アメリカ看護師関連

それは5月末、確か28日ぐらいだったと思う。

病院の社内メールをチェックしていると、いきなりこんな告知がされていたのだ。

私が働いているリハビリ部門を7月1日付で、とある老人ホーム経営の会社に売却されることになった、と。

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寝耳に水、晴天に霹靂、ということわざは、まさにこんな時に使うんだな、と思った。

リハビリ部門はいろいろ問題があって、数々のブラック施設を渡り歩いてきた私ですら、

「これはちょっとどうよ?」と思う点も多々あったことは否めない。

改善は必須だったが、病院がこんな風な思い切った手段に出てくるとは想定外だった。

メールには従業員に対して、説明会を行うとあったが、そこで発表されたことは、私にとって、とんでもないことこの上なかった。

なにがとんでもなかったかというと、今現在、リハビリ部門で働いている職員は今後3か月、病院のいかなる他の部署への転属願いを出せない、と発表されたのだ。

一日の猶予もなく、メールで告知があった28日の即日からだった。

前の記事に書いたように、私は病院の病棟へのポジションへ転属願いを出すべき、ずっと準備をし、カウントダウンをしていた。

転属願いを出せる日付は、6月5日だった。

皮肉なことこの上なく、まさにたった一週間を目前にして、私の計画は突如、握りつぶされてしまったのだ。

病院の職員ではなく、一老人ホームの従業員になってしまうとなると、私の同僚の看護師たちは、他の病院の転職へ向かって動き始めていた。

ただ私の場合、足枷が存在したのだ。

この病院のリハビリ部門に就職する際、私は3年間はこの病院に働く、という契約書にサインをしており、その見返りとして、ニュージャージーからの引っ越し費用や、契約ボーナスを支給されていたのだ。

3年を前に辞めるとなると、それらのボーナスを返却しなければならないことになっていた。

しかし、この事態はいったいどういうことになるのだろう?

私は、病院で働けるからということで、わざわざニュージャージーから、この小さな町へと引っ越してきたのだ。

老人ホームでの仕事だったら、ニューヨーク、ニュージャージーでも、そして他の州でだって、選ぶことができるぐらいあるのである。
老人ホームで働かなければならないのだったら、この小さな町での不便な生活を続ける理由は全くないのだ。

ただ、ここで私が同僚の他の看護師たちのように、他の病院への転職をしてしまったら、契約違反になってしまい、ボーナスを返済しなければいけないのか否かというのがわからなかった。

そこで、早速私は上司、人事の担当者にあて、メール、電話をしまくったのだが、とにかく、皆、この事態の応対に、私ごときの個人的な質問に答える余裕はなかったのだろう。

何度か留守電を残したり、メールも繰り返し送ったものの、全く返答をもらえなかったのだ。

彼らにとっては、一従業員の大したことないことだったかもしれないが、私個人にとっては大問題だった。

原則として、今リハビリ部門で働いている職員は、自動的に売却先の老人ホームの職員になることを強要されるわけだったが、私にその気は全くなかった。

転職活動を始めたものの、とにかく私は契約ボーナスを返却しなければならないか否かを知る必要があった。

しつこく、メールを出し続け、留守電を残し続けて、半ばストーカーになるとはこういう気持ちなのか、と思い始めたころ、老人ホーム会社への売却の日付の一週間前を切った頃、ようやく人事から連絡が来た。

契約ボーナスは、返さなくていいよ、と。

 

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